あきらめるか、粗大ゴミ 横浜市を追求するか
社会のW排出からの限界損害費用もWの増加につれて逓増すると考えられ、それがODで示される。
すでに述べたように社会の最適汚染水準はO11もであるからWの排出量をWOW1だけ減らす必要がある。
では、削減量Wもwiを企業A、Bにどのように割り当てればよいだろうか。
各企業のW排出量を一律に一定割合カットすることでWoWiを削減するという数量規制が行われたとしよう。
この時、この規制に伴う費用は、企業Aは排出量がOAWA'になりAWA11'であり、企業Bは排出量がOBWA'になり、BWBWB'になるので、社会全体で(AWA11 '+BWBWB')となる。
ところが、同じWOW1だけ削減する場合でも、企業AでWAWA」削減し、企業BがWBWB」削減した場合には、社会全体にとっての規制の費用は(A'WAWA」+B'WBWB」)となり、明らかに、一律削減の数量規制の場合よりも小さくなる。
正確には、排出量削減の限界費用が両者で等しくなるように2つの企業に割り振れば、社会にとっての排出量削減の費用を最小とすることができる。
このような数量規制を行うには、社会全体のW排出に伴う限界利益曲線および限界損害曲線に加えて、個々の企業のW排出に伴う限界利益曲線すなわち個々の企業の生産に関する技術的条件まで知らなければならないが、これは容易なことではない。
これに対して課徴金では、税額OT(=OAT=OBT)を課して社会的最適汚染水準を達成しようとする。
各企業にとっては、Tを通る水平線がW排出の限界かつ平均費用曲線の役割を果たす。
OTが課税されると、当然企業AはPAWAとTを通る水平線との交点での排出量OAWA」のWを排出し、企業Bは同様にOBWB」のWを排出する。
この場合、社会全体のW排出に伴う限界利益と限界損害に関する情報が必要な点は数量規制と同じであるが、各企業のW排出に伴う限界利益曲線の形状を全く知る必要がない点において、政策当局にとっては必要情報コストの多大な削減となろう。
上記でみたように、課徴金は外部不経済の原因者すなわち汚染者にその限界費用を課徴金分だけ高くすることで外部不経済を減少させる誘因を与える。
これに対して、補助金は、汚染者に汚染物排出量を1単位減少させるごとに与えられることで、課徴金と同じ誘因を与える。
それゆえ、補助金は一種の逆向きの課徴金と考えられる。
1950年代から1960年代、日本における環境汚染は、とりわけ大都市において悪化の一途をたどった。
国レベルでの環境法規は未整備であったが、より厳しい公害対策を求める世論や住民運動が高まった結果、また大都市域で革新自治体が増えたこともあり、地方自治体は法律や中央政府との間にコンフリクトを起こさずに公害対策を進める方法や手段を探求していた。
その1つの方法が公害防止協定で、ある。
多くの場合、工場と自治体との問で協定を結び、工場の排出口ごとの濃度あるいは汚染量を決めている。
公害防止協定の最初のケースは、1964年に横浜市と人口密集地域に隣接して石炭火力発電所の建設を計画していた電力会社との聞に調印されたものである。
その時大気汚染防止に関する1962年法があったけれども、発電所は厚生省(当時環境庁はなく、今日でいう公害対策は主に厚生省公害課が担当していた)や地方自治体の管轄領域からは除外されていた。
横浜のケースは、地方自治体が企業に具体的な公害防止対策を実施させることができることを示した点で画期的であった横浜市で公害防止協定が成功した主要な要因は2つあるといわれている。
1つは、横浜市が公害対策の面で電力会社を技術的にも指導・助言しうるだけの十分なスタッフをもっていたことであり、もう1つは、住民がその公害防止協定に十分な支援を与えたことである。
横浜市のケースに続いて、1968年9月にKとTとの聞で公害防止協定が結ばれ、そこでは、①発電所から放出される二酸化硫黄は1974年までに1967年レベルの50%が削減されること、②低硫黄原油が使われるべきこと、①東Kの代表が発電所内に監視に入ることを認めること、等が約束された。
公害防止協定は、国の法律や地方の条例にもとづいておらず、現在でも法律上問題があるとの指摘もある。
しかし、横浜や東京の公害防止協定が、公害対策において効果的で成功したため、同様のスタイルの公害防止協定はそれ以後全国に広がり、現在ではその数は約3万にまで上っている。
これ以外にも、地方自治体が公害対策として実行しうる方法には、条例、行政指導等がある。
しかし、公害防止協定を含めて、そうした地方自治体の環境政策手段は公害の免罪符の役割を果たす場合がしばしばある。
一般に、地方自治体のある政策手段が効果を発揮しうるか否かは、日本の経験からすれば政策手段それ自身にもよるが、地方自治体の行財政システムが住民参加に支援された地方自治の原則にもとづいているか否かに大きく依存しているといえる。
1960年代から1970年代に日本の環境政策を前進させた公害防止協定にみられるような地方自治体の環境政策の経験は、今、ヨーロッパをはじめ世界であらためて注目されている。
図9・3において、汚染物排出量を1単位削減させるごとにOT(=OAT=OBT)の補助金が与えられるとしよう。
企業Aは汚染物排出量を私的最適量OAWAからOAWAHに削減すると面積WAA'WAHの利益が失われるが、汚染物排出量が削減されたのに対して面積の補助金が得られるので面積A'WASの純利益となる。
汚染物排出量の削減によって失う限界利益と得られる補助金とが等しくなる排出量OAWAHが、企業Aにとって利益最大化のための均衡点になる。
これはOTの課徴金が課された場合の均衡点に等しい。
これはA以外でも同様であるので、課徴金と同率の補助金は同ーの社会的最適汚染量を実現する。
しかし、汚染者の受け取るあるいは失う利益は両手段のもとで全く異なる。
近年、地球的規模の環境問題とりわけCO2等温室効果ガスによる地球温暖化問題へ対処する手段として排出権取引制度が注目されている。
排出権取引制度は、デイルズ、トロント大学教授によって、汚染物質を排出する権利=環境を利用する権利という売買の対象になる財産権を設定するという提案がされたことに始まる2デイルズの提案では、別途に定めた汚染の目標水準に到達できるように政府が汚染物質排出権利書を一定量発行し、汚染物質を排出することが必要な企業はこの権利書を汚染必要量に見合うだけ購入しなければ汚染物を排出できないとするのである。
排出権利書は一度政府から供給されると、後は汚染者間あるいは環境保護団体等によって市場で売買される。
つまり、排出権取引制度は汚染物質排出権に関する市場を創設することで効率的に最適汚染水準を達成しようとする政策手段である。
排出権取引制度の機能とメカニズムは次の通りである。
図9・4では、もし政府がOQ量の汚染量に対応する権利書を供給したとすれば、市場での排出権に対する需要は需要曲線Dで示されるが、これはすべての汚染者の汚染防除の限界費用の集計にほかならない。
両線は点Mで交わり、排出権の市場価格はOPと定まる。
この価格OPは単位汚染物量当りの課徴金と同様な働きをし、ある企業にとって、価格OPが汚染防除の限界費用より高ければ汚染防除を行う方が有利だし、逆にOPが限界費用を下回る場合は、権利書を購入して汚染をする方が有利になる。
したがって、社会全体ではOQ量の汚染物排出が起こり、これは社会的最適汚染量である。
課徴金の場合には政府は最適な税率を発見し定める必要があるのに対して、排出権取引制度では排出権の価格を決定する必要はなく、政府は社会的最適汚染量に見合うと思われる数量の排出権を発行しさえすればよい。
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